#4 中学留学生の自己認識について
<前日のブログに続きます>
中学校から高校にかけて異文化のなかにあって日本人としての自分を確立することの要素を3回にわたって考えてきました。アイデンティティマニュアルのようなものがあって、知識面、意識面の明確な指標があればいいのでしょうが、それはありません。
アイデンティティの確立を学習ばかりで行うことは自然ではないように思います。留学をしている子どもたちにとっては、アイデンティティ確立の基本は、自分の家にあると思います。家は故郷であり、世界のどこにいても故郷は本人を温かく本人を迎えてくれる場所であるはずです。その温かさ、こころの安らぎ、安堵感というような意識がアイデンティティの基本ではないかと思います。安心さが確保されているので留学生たちは異文化のなかでのびのびと自分らしさを発揮できるのではないでしょうか。
あるお母さんは、我が子が留学中、天声人語の切り抜きを毎日郵送したそうです。今であれば、写メで撮って、それをメール添付して送ればいいわけですが、それが無い時代、毎日のお母さんの我が子に対する労力と時間が、家族の絆を強くするうえで欠かせないものだったと思います。そのお母さんの意識のなかに、我が子に対する深い愛情が感じられます。
冬休み明けで学校に戻る途中、シカゴで豪雪のため足止めされ、電話で体調不良を訴えた我が子のため、その日のうちに日本を発ったお母さんがいました。
終末になると、かならずスカイプで2-3時間、我が子に付き合っているお母さんもいました。
少し古い話ですが、毎月の国際電話料金が20万円を超すと嘆いているお父さんもいました。
中学時代の留学においては、すべてがマニュアル通りに何の問題もなく進むというわけにはいきません。留学している本人が乗り越えなければならないのは、日本人としての自己認識という問題だけではなく、読み書きの英語力の確保とさらなる進展、学校生活での生徒間の人間関係、進路の問題など考えるべき問題や解決すべき問題はたくさんあります。
解決すべきことが多ければ多いほど、本人は成長します。その成長のプロセスのなかに家族の果たす役割は必ずあり、家族の絆は本人の日本人としてのアイデンティティの確立に大きな役割を果たします。
中学、高校という人生の第二成長期を異文化で過ごすことで、日本を客観的にみつめ、自分の将来を家族と共に設計していくことで本人のアイデンティティは立派に確立していくと信じます。