ほめること-英語圏と日本の文化背景その3
「(小・中・高校生の)留学で挫折して中途帰国をしてしまう人は何%でしょう」、
私はカウンセリングで親子に質問します。今までたくさんの解答をいただきましたが、
「おおよそ10%から20%くらいは挫折する」というのが一般的な皆さんの意見です。
実際は1%-2%くらいです。もし、20%の生徒が帰国することになれば、
私はこの仕事を続けられなくなるでしょう。
それほどに、意志半ばで挫折するということは本人も周囲も大変な思いをします。
どんな生徒が中途帰国の可能性があるか、またその予防策については、
機会を改めて述べたいと思います。
英語もわからず、友達もいなく、親元から離れて初めて経験する独立生活で、
子どもたちを支えている大きな要素が「ほめられること」にあると私は考えます。
自身の留学生活を振り返っても「笑顔こそ、私が留学で学んだこと」でした。
帰国してからずっとそう思ってきました。
「なぜあれほどストレートにすなおに子どものように嬉しさを
彼らは表現できるのか」-私は自分のこころに生じたこの疑問を
自らそうなることで、大きな精神的糧を得たと思います。
ほほえみの持つ潜在的パワーは「モナリザの微笑」に象徴されていないでしょうか。
あの微笑がどれほど世界の人に愛されたことでしょう。
大切に大切に保存されているその価値は計り知れません。
また、笑うこと、笑顔でいることが幸福の原点であることを否定する人は
いないのではないでしょうか。
ほめることは笑顔や笑いと同様にこころを元気にし、
活性化する精神作用の一つであると思います。
10代の留学生の成功の大きな要素として、
異文化のポジティブインパクトとしてほめられることがあると思います。
これは相当に大きな意識革命を留学生本人に起すと思います。
今まで、点数という価値観を中心に学校生活を強いられて、
すなおに「なぜ」を発すればマークされ、まともに議論すれば、
感情的に「退場」を命ぜられたりする、そんな社会が激変します。
激変しなければならない段階に私たちの国と社会は直面しています。
わからなくても、You can do it.と挨拶のように言われる。
不安げにしていると、You’ll be all right.と笑顔で言われる。
少しだけ努力すると、Oh, you did it. It’s great.と感動される。
それを「口だけ」と捉えるか、「私を認めてくれている」と
捉えるかは本人次第です。ポジティブに捉える生徒は基礎教育が
しっかりしていると私は思います。
ネガティブに捉えても、誰もハッピーな人はなく、
誰も得をしないわけですから。
英語圏を代表する一番わかりやすい、シンプルな長所は感情表現の豊かさであり、
その豊かさの一つとして日本人留学生を特に刺激するのが
「ほめられること」であると私は確信します。