「知」は海を渡って来る-その5:未来へ
私は10代の若者と接するたびに「テイクオーバー」という英語を
無意識に使います。「何を」彼らにテイクオーバー(取る・引き継ぐ)
してほしいのだろうかと自問自答します。
それは、希望だと思います。
私が中学校の時から興味を持ち続けてきた教育。その教育を
情報革命という社会環境の激変の中で、
私は若い人たちにテイクオーバーしてもらいたいと願っています。
若い人たちに先生になってもらいたいのではありません。
海外を知った人に自らの体験を、本当のことを、多くの人に
伝えてほしいと思うのです。
もう、「知(識)は海を渡って来る」ことはないからです。
私が英語を教えている留学帰りの生徒との一昨日の会話です。
-君はアメリカで4年間過ごしたが、最近の若者は外に出ないといわれている、
どうしてだと思う。
「その理由は3つあると思います。
ひとつには人口が減っているということで、留学の分母が小さくなっていること、
ふたつめには、今の状態で満たされているから、出る必要がないということ、
みっつめは、お金がないということ。」
-君は外にでてよかったと思いますか。
「はい、日本よりは」
-どうしてですか。
「いろいろな人や考え方があることが知れました。」
-そうですか。それがなぜ君にとってよかったのですか。
「自分の知らない世界、知らない人々が知れました。世界は広いです。」
-それで?
「自分は小さいです。もっと大きくなりたいです。」
-これから大学生だね。どうしたいですか。
「1年くらいはまた留学したいと思います。夏休みなどは、いろいろなところを
訪問したいです。」
-私は学生のとき、英文科にいたのだが、怖くなった。英語は話せないし、
勉強も自分で何がやりたいという目標が見えない。だから留学した。
海外は日本とは違っていた。まるで劇場だった。
私の劇場と君の劇場。私はずいぶんと観客として楽しんだが、
君は舞台で演じる人になってください。
日本の「希望」を私は君たちにテイクオーバーしたい。
「はい」
世界のどこでも誰でも望めば自宅で「知」は探せる時代です。
近い将来、英語ができない人でも「知」はパソコン上であれば、
探すことができるようになるでしょう。かなり近い将来です。
小学生でもこの情報ネットワークの知識はある程度あります。
しかし、目の前にある「知」には、ほとんどの人が無関心です。
豊かさ、便利さで私たちはすっかり怠惰に
なってしまっているのではないか、私は不安になります。
ゆえに、私は若い人たちに世界を見てもらいたい。
そして、自分を、新たな自分を発見してもらいたい。
その時に始めて、今までの知識が活用できると思います。
豊かな日本から飛び出して、ハングリーな精神を海外で、
自分のスタイルで学んで欲しいと私は願っています。
つづく