小・中・高校留学-これからの教育8:英語学習の知恵
アメリカで11年生の国語(英語)の授業を見学したおりのこと、
題材はハムレット、私の生徒は教科書の内側にもう一つ、
福田恒存訳の文庫本ハムレットを重ねていました。
社会や理科のクラスの課題は日本語版、ウィキペディアでまず概要を知る。
さらに、個別のテーマについては徹底的にインターネットを活用する。
もちろん言語は日本語です。
インターネット上の情報をコピー&ペーストして、課題を完成することは、
世界の学校に共通した明確な学校規則違反ですが、
日本の生徒たちは、限られた時間を使って、必要な知識をネット上で拾い、
理解し、英語に変えてゆく作業を授業外で行うわけです。
情報は日本語、処理は英語、これは規則違反ではないでしょう。
この作業を忍耐強く続けることで、留学生たちは異文化の学校の中で、
生き残ってゆく術を学んでゆくわけです。
英語ができないハンディをどのように克服するか、留学生は知恵を絞ります。
また、失敗を繰り返し、徐々に同じ間違えを減らしてゆきます。
たとえば、初期の留学生はなんでもかんでも、
「イエス、アーハァ、ウーフゥ」などと解っているふりをする傾向があります。
Do you really understand what I said?
Tell me what you have to do tomorrow.
など、先生が気づいてくれればまだ良いほうで、
ともすると、重要な指示を解っていなくて、
おいてけぼりをくうこともあり得ます。
初めから「知ったかぶりはやめたほうがいい」と先輩留学生は
切実なアドバイスを後輩に送ります。
ホームステイ、寮滞在にかかわらず、部屋をきれいにしておくことは
自分が勉強以外で優位に立つ鉄則だそうです。
きれいにしておくことで、ホストや先生の信頼を得ることができる。
そうすることで、部屋のチェックが甘くなり、ホットポット、
ライスクッカーが使えることがある。
ホットポット、ライスクッカーは一般的には使ってはいけません。
しかし、日本の親から留学生の送るもので不動の1位を占める、カップヌードル、
インスタントラーメンなどをこっそりと食べるために必須のものです。
これも広義の知恵とは言えないでしょうか。
勇気を振り絞って、皆が集う場所、たとえばコモンルームなどに
単独で行き、無心でそこの連中に話しかける。
初めにその場所に飛び込むことは、清水の舞台から飛び降りる気概が
必要かもしれませんが、1週間もすれば、「なーんだ、こんなもんか」
と思うそうです。この1週間が大変なのです。
音楽、スポーツなどは、自己アピールの手段として使われます。
もちろん、芸術、体育はそのものに価値がありますが、
留学生の損得感情としては、生き残りをかけて、
I’m here.
Look at me.
とどれほど大声で叫びたいことでしょう。
すくなくとも、謙遜、謙譲の美徳がほとんどない英語圏では、
言葉では勝負できないのですから、それなら「態度で示すしかないでしょ」と
留学生たちは、周囲から学び実践の機会を考えるのだと思います。
ここに述べたすべて、現場からの意見をもとにしています。
「知恵」と考える「苦労」に私は元気と希望を彼らからもらっています。