ボーディングスクールの授業 - 知っていること、考えること
中学、高校ボーディングスクールへの留学を目指す生徒に学校での学習科目の好き嫌いを問うと、多くの生徒が好きな科目として英語を挙げ、嫌いな科目として「歴史」が筆頭になります。好きな科目が英語というのは、留学を目指している生徒ですから、その答えは解りやすく、納得のゆくものですが、歴史が嫌いというのは腑に落ちません。
アメリカのバーモント州にあるSt Johnsbury Academyを訪問した際、そこで学ぶ日本人留学生に「歴史」の授業について好き嫌いを尋ねたところ、「楽しい」、「興味深い」という模範的な回答が返ってきました。
日本の生徒が歴史を嫌いな理由は、暗記の多さだそうです。とにかく覚えなければいけない項目が多く、それだけでうんざりしてしまうというのが歴史嫌いの生徒にほぼ共通した意見です。
それに対して、上記の留学生は「(暗記すべき)年代は、授業で繰り返し出てくるので自ずと覚えてしまう」というのです。日本の歴史嫌いの生徒からすれば、羨ましい限りの回答ですが、なぜボーディングスクールではそのようになるのでしょうか。
その第一の理由は、ボーディングスクールの教育が生徒に知識を強制させるのではなく、考えさせることによると思います。そして第二に歴史の授業でのテーマの取り上げ方の違いではないでしょうか。
ボーディングスクールを代表する授業形式は、一クラスの生徒数が15人以下という少人数制と討議形式の授業です。歴史のクラスにおいては、試験にでるから覚えるべき項目の羅列とそれを生徒がノートに書き写すという日本の学校では当たり前の作業は見られません。その代わり、生徒全員が対面できる円卓テーブルで先生と生徒、また生徒同士の意見のやり取りが歴史授業の中心となります。そこで、生徒たちは自分の考え方をどのようにうまく表現するかを訓練します。また、人の話をよく聞いて、それを理解し、問題点や疑問点を明らかにするというようにとにかく考えることをとても重視します。
学ぶことに興味を持つのは生徒自身の責任ですが、面白い授業作りは先生の責任だと思います。その点、ボーディングスクールはとても学校をつくる側の人が考えるだけでなく、実践しているように思います。