留学コンシェルジュ

ほめることの大切さ

「菜根譚の裏を読む」という本の著者の一人である渡辺昇一さんは、
日本の著名な英語学者ですが、人をほめて伸ばすことの大切さを
その著書で語っています。
彼によるとクラシック音楽の世界を見てみると、留学を体験した先生は原則として、
自分の弟子や生徒をあまり叱らないのだそうです。
留学していない先生はべらぼうに厳しいのだそうです。
どちらかを選択するのは生徒のほうですが、渡辺さんが言いたいことは、
西洋では、「叱っていたら生徒がいなくなってしまう」という当たり前のことが、
自然に行われているということだと思います。
多民族、多国家のヨーロッパにおいては、生徒側が自然に、
イギリスがだめならフランスがある、フランスがだめでも、
オーストリア、ルーマニア、etcと発想します。
四方が海に囲まれた日本ではこのような発想が、生まれなかったのかもしれません。
日本式徒弟制、西洋式いずれかが絶対に良いということではなく、
自分に合ったほうを選べば良いということだと思います。
子弟関係のみならず、上司と部下、親子、先生と生徒、いずれの関係においても、
私はほめて伸ばすことが叱って伸ばすよりも良いと思っています。
では、何をほめるのでしょうか。
子弟においては、作品やパフォーマンスの出来栄え、
上司と部下においてはその業績、
親子においては、テストの点数や賞の獲得、
先生と生徒においては、教えたことの習得度、
ということが定石でしょうが、私はより大切なものをほめる
という着想で考えられないだろうかと思っています。
それは、本人のこころのありかたです。
すべての人間関係においてほめる基本はこころという意識にある、
と私は信じています - ほめられたというこころがなるべく長く
ほめられた人に影響し、良い結果を出し続けてほしいからです。
「勝負は時の運」と言われます。確かに、相手がある以上、それは否定できません。
しかし、「運」まかせで人生を生き抜くわけにはゆきません。
ラッキーを継続させるためには、主体者のこころが常に生き生きとしていて、
柔軟であり、忍耐力も必要だと思います。
そして、ラッキーに感謝すること、さもないと
アンラッキーに責任が持てなくなります。
個々の持ち味と特性を鋭く見抜き、
苦しいときの耐性を築くことが先達の道ではないかと、
私は自分に言い聞かせています。
「人生は長く、良いことも、悪いことも、づっと続くわけではない」
ということを、小さいうちから身をもって体得した子は、
自分の納得できる人生を作れるのではないか、
それを実践することがこの仕事を愛する大きな部分を私のなかで占めています。

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