ボーディングスクールの経営基盤
ボーディングスクール教育の本質は知識の習得ではありません。
自立した人間を育てることです。
そのために健全なる学校運営と健全なる経営が必要です。学校が生き生きと活性化し、その教育理念を実現するためには、優秀な先生がその力を発揮すること、学習のための施設が充実していること、先生、学生、そして親の間のコミュニケーションが取れていることなどが重要でしょう。先生やスタッフに対する労働環境も24時間が教育であると明言するボーディングスクールだからこそ重要です。
一人の先生が受け持つ学生の数、そして先生が分担する学校内での役割など、学校理念を徹底して学生に教育するためには先生への過剰負担は学校を崩壊させてしまいかねません。ボーディングスクールの授業料やそのほかの経費については第3章で詳しく述べますが、ここでは親御さんが安心してお子さんを預けることができる学校としてその経営について触れます。
ボーディングスクールへの寄付金
アメリカ最古の名門大学Harvardの寄付金貯蓄額は258億ドル、日本円(¥100)にして2兆5800億円に達するそうです。東海岸のIVYリーグ校はHarvard大学には及ばないにせよ、寄付金の総額は数千億円台であることは間違えありません。
ボーディングスクールレビューに登録されているアメリカのボーディングスクール237校の平均寄付金残高は1700万ドルとなっています。1ドル100円で計算しますと17億円です。この金額は日本の私立高校の平均年間学校運営費用のおおよそ倍以上に相当します。
一番寄付金貯蓄額が多いボーディングスクールはPhilips Academy, Exeter校で10億ドル、日本円で1000億円です。後述するテンスクールズと呼ばれる名門ボーディングスクール10校の平均寄付金貯蓄額は500億円を上回ります。
多くのアメリカのボーディングスクールが数十億単位の学校運営資金を内部留保することで、学校の経営が安定して、現場の教師たちは専門分野の知識をのびのびと学生たちに伝えることが出来ます。加えて、24時間教育環境の中で、自分の信じる生き方や価値観をも学生に伝えられる余裕が生まれるのです。
ボーディングスクールでの先生対学生の関係は授業だけではありません。それゆえに職員対学生の比率が1対7となるのです。本来、人を育てることには手間ひまがかかります。ゆえにそれに携わる人たちにはそれなりの報酬がなければなりません。ボーディングスクールの授業料(寮費を含む)だけでは、有機体としての学校を維持してゆけないのが彼らの現状なのです。
卒業生が支えるボーディングスクール
平均創立年が1899年のボーディングスクールの内部留保の出所はその多くが卒業生なのです。前項で母校へのプライドと愛着を述べましたが、アメリカ人は伝統的に寄付に対して考え方や捕らえ方がオープンです。
JFケネディ故アメリカ大統領が卒業したのはChoate Rosemary Hallというコネチカット州にあるボーディングスクールですが、この学校の卒業生であるアメリカでも有数の慈善家で莫大な資産を有するPaul Melonさんはこの学校の発展のために膨大な資金援助をしました。芸術にも造詣の深かった彼は母校に美術館を建てました。その建物のデザインや内部はすばらしいものです。
Choate rosemary Hallは彼によってさらに進展したといっても過言ではないでしょう。
自分を育ててくれた母校に感謝する、そして自分の成功はあのときの学校生活があったからこそとその感謝の気持ちから寄付をする。そして、自分の子供や孫たちにもその感謝の気持ちを伝え、同じ教育を同じ学校で受けさせる。
このようにボーディングスクールは多くの社会的成功者によって支えられて、運営・経営されているわけです。