スイス留学体験記を寄稿していただきました。
スイスにあるLeysin American Schoolを卒業された吉澤幸希さんが自らの留学体験記を寄稿してくださいました。現在社会人として活躍している彼女にとって10代の留学が後の人生にどのように影響したのか、これから留学を考える皆さんはぜひご一読ください。
1年間にわたるアメリカでのホームステイを経て、私が次の進路に選択したのはスイスにある全寮制のアメリカンスクールでした。スイスという未知の国、世界50カ国以上から生徒が集まる国際色豊かな環境、そして大自然に囲まれての全寮生活。とにかく好奇心旺盛で、人とは違う何かをただひたすら追い求めていた10代の私が選択した道は、今にして思えば「未知なる自分」を探す長い旅の始まりでした。
世界中から集まったクラスメイトの中でも、親しくなるのは中国、台湾、韓国といったアジア圏からの生徒たちでした。彼らとの会話の中で、当時私が強く感じたのは「日本人」として自分が何を主張できるか、どんな歴史観を語ることができるかということでした。そしてそれらの根拠となる知識が他のアジア圏の学生たちに比べて圧倒的に足りていないことを痛感したのです。欧米の文化に触れることで国際感覚を身に着けたように錯覚していましたが、自分が属する「アジア」について何も知らないという衝撃と焦燥感が、その後の台湾留学に繋がりました。
なにより親元を離れ単身海外に渡航することで、一番身近で、そこにあることが当たり前に感じていた「家族」の存在がどれほど大きなものだったかに気づきました。思うように英語が喋れず、意思疎通がままならない環境下で、届けられる日本食がたくさん詰まった荷物に添えられた家族からの手紙を読みながら、改めてその存在に感謝し、家族に対し臆することなく素直な気持ちを伝えることができるようになりました。遠く離れることにより、両親とは自立した大人同士の関係を再構築できたのではないかと思っています。
多感な時期に「自分とは何者か」というアイデンティティーの衝突に真正面からぶつかり、その答えをあらゆる角度から見つめ続けたことで、相手と向き合うときには、人種、国籍、性別、肩書きその他、その人を描写するあらゆる属性以上に、何を感じ、何を大切に思うのかという、その人の物事に対する姿勢や考え方の本質を探るようになりました。そしてこのことは、今現在仕事をする上でもとても役に立っています。
言語は思いを伝えるツールであり、外国語が話せるとそれだけコミュニケーションを取れる人の数は増えますが、だからといって必ずしもそれ自体がすごいわけではありません。日本語でも外国語でも、大切なのは自分の気持ちを相手に伝えようとする姿勢なのだと、私は思います。その上で、10代という感受性の豊かな時期に外国語を学ぶということは、自分の中にある感情を表現する言葉の幅を広げることであり、自己についても他者についても、より深く考え、理解できるようになる最良のチャンスなのではないかと考えています。
チャンスを掴むのは自分自身です。少しでも「やってみたい」という気持ちがあるのであれば、どうかその気持ちを大切に、勇気を持ってその一歩を踏み出してみてください。
プルデンシャル生命保険株式会社
ライフプランナー
吉澤幸希