第1章-2 なぜボーディングスクールなのか
10代半ばにして家族や親しい友達と離れて英語のハンディキャップと異文化の中で寮生活をすることは決して簡単ではありません。また、親にとってもその費用負担は日本国内の私立中学・高校の5倍あるいはそれ以上に達します。にもかかわらず、なぜボーディングスクールは世界中の親たちから選ばれる選択肢であり続けるのでしょう。その答えは長年に渡り受け継がれた教育の質にあります。
自分の言葉や行動に対する責任を求められる大学生活、その延長線上にある社会生活への準備を徹底して行うため、ボーディングスクールはカレッジプレップスクール(大学進学予備校)とも呼ばれています。全人格教育を追及するため、生徒が先生と一体となって生活するボーディングスクールでは教育は教室内のみで行うという概念はありません。ボーディングスクールライフそのものが教育なのだというのが彼らの理念です。「自ら考え、自ら行動する。」失敗が許される環境で生徒たちは自分の行動に対する責任のとりかたを徐々に学んでいくのです。
学習指導面についてですが、教師のおよそ6割以上が大学院を修了しており、学校の先生対生徒の比率は1:7、授業の平均人数は12人。徹底した少人数制指導によって個々の生徒への配慮が可能となり、学習内容はそれぞれの学習力の上を目指すように設定されます。その結果、システムとして個性を尊重することが出来るのです。
続いて施設面についてですが、私の訪問した学校は27年間でのべにしますと、300校ほどになると思います。そのなかでもボーディングスクールへの訪問のたびに私は感心し、時に感動もします。
演劇や音楽の発表に使われる「劇場」。ジム、温水プール、体育館、アイスリンク、テニスコート等の「体育施設」。1万冊以上の蔵書を誇る「図書館」。絵画、陶芸、彫刻、また音楽の個人指導も可能とする「芸術施設」。ネットワーク環境の完備等、施設面においてボーディングスクールは群を抜いています。机に向かう授業以外の時間で生徒たちは自分の特性や個性といったことを発見するきっかけを見出していきます。
学校経営・運営のプロが100年以上の歴史と経験の中から生みだした生徒たちを自立させる技術は今の時代にこそ求められているように思えます。世の中が豊かになるにつれて情報は溢れ、人生における様々な選択と向き合う未来が子どもたちを待っています。
未来をつくる子どもたちに、正しい力を身につけさせるためにも、教育は今その本当の質を問われているのではないでしょうか。