#1 ボーディングスクールが生徒に求めるもの
ボーディングスクールが目指しているのは、卒業生の進学実績や学力試験(SAT、ACT、TOEFL、IELTSなど)の向上のみではもちろんありません。専属のカレッジカウンセラーや生徒個々へのアドバイザー制度など、日本に比べると教育システム面において個別指導がより充実しているような印象を受けるのですが、いくらシステムが充実していても、その精度が高く綿密であっても、それを使う生徒が動かなければ、用をなしません。
生徒を動かすということをボーディングスクールは究極の教育目標にしていると私は思います。彼らの個性をどう活かすか、どうすれば生徒たちがやる気になるのかなど、ボーディングスクールに携わる人であれば、この課題にいかに真正面から立ち向かうかを日常のテーマにしていると思います。
授業という観点からボーディングスクールの教育を見ると、少人数のクラスがまず思い浮かびます。特に留学生のためのESLクラスにおいては、10人以下で授業が行われることも稀ではありません。では、ひとクラスの人数が少ないメリットとは何でしょうか。40人ちかい日本のクラスと比較して何がどのように価値があるのでしょうか。
第一にコミュニケーションが先生と生徒の双方向だけでなく、生徒同士もふくめて立体的になることがメリットとして挙げられると思います。コミュニケーションの大切さは、子どもたちが大人になる過程で身に着けていきますが、ボーディングスクールでは、それを加速させることにかなり力を入れています。
第二に覚えることを中心に考える必要がありません。テストのための勉強はその多くが暗記することに費やされます。考え方やその過程は関係なく、とにかく覚えないことには結果が出てこない勉強方法は、生徒にたいして義務感を強いますが、やる気の根源にはならない場合がほとんどではないでしょうか。暗記することよりも、生徒に考えさせ、自分の意見を身に着けさせ、それを褒めて伸ばす方がはるかに効率よく、彼らに学びの姿勢を習得させることができます。
第三に先生の目が生徒にかなり行き届きます。15人程度であれば、各生徒の個人的な悩みや望みにも先生が目を向けることができると思います。
つづく