＃5 教育の基本
幼児期の教育として七田式教育は、子どもたちの学習潜在能力を引き出すために有効ではないかと思います。幼少時、訓練次第で大人では到底達成できないと思われる瞬時の判別力、暗記力、計算力などが開発されることは、確かに画期的であり、それを発見し開発して七田先生は偉大ではないかと思います。
私的な経験で恐縮ですが、私は故七田真先生に一度だけお会いしたことがあります。七田先生の幼児教育法が産声を上げたころ、すなわち80年代の初めころだと思いますが、アメリカの教育事情を知りたいという問い合わせを先生から直接電話でいただきました。
東京で先生とお会いすると、アメリカの中等教育機関、ボーディングスクールについてかなり突っ込んだ質問が来ると思っていたところが、2時間余りの話し合いのほとんどが先生による幼児教育論に終始しました。
最後は、コンサルタントとして駆け出しの私に対して、「頑張ってください」
と激励されて私と先生のミーティングは終わりました。
今から思えば、七田方式の教育をアメリカに輸出できるか、その糸口を探られていたのかと思うのですが、そのようなビジネス的なお話よりも、先生の熱く語る子どもたちの能力の可能性についての話に私は強く興味をひかれました
確かに七田方式学習法を幼少時にマスターすれば、初等教育課程ではかなり優位な立場になれるでしょう。基礎的な学習事項を、そのスピードと正確さをもってすれば、小学校での教育を半分ほどの時間で習得できるのではないかと思います。
七田先生はしかしながら、子どもたちの潜在能力のみを徹底して開発することだけに自らの教育を適応させませんでした。そのことが彼をもって私に尊敬の念を抱かせるだけでなく、人として偉大だと思わせる根拠です。
彼は能力の使い道こそ大切だとして、幼少期の子どもたちに世界の歴史的偉人の生涯を熱心に子どもたちに言い聞かせたのです。
人として、どのように社会の役に立てるか、社会に貢献できるかという基本的な姿勢を七田先生は自覚していました。教える側からすれば、一定のマニュアルをこなせば成果が見える能力トレーニングに終始したほうが簡単で商品価値も高いのです。しかし、それのみでは、人の道に外れることもあります。
能力のみで人の評価はできないということを七田先生は実践されていました。
彼の精神を私は一生忘れることなく、恒にこころにおきながら、コンサルタントとして自らの職務を全うしたいと思っています。
