#3 教育の基本
教育の基本は学習技術の習得ではなくて、人として不可欠な社会性を身に着けることにあると思います。誠実、勤勉、正直などは、社会を維持発展させていくために、そこに参加する一人ひとりはが持つべき性格要素です。
いくら知識があっても、知識そのものが独自で役に立つわけではありません。それを役立たせる主人公はあくまでも人そのものです。
父性の復権という本があります。1996年に発行されてベストセラーになりましたので、私のブログを読んでいる方で、この本を読んだ方もたくさんいらっしゃると思います。
この本の中で、筆者の林道義さんは、「中学生が絶対してはいけないこと、日米比較(日米中学生・母親調査、千石保・鐘ヶ江晴彦・佐藤郡衛『日本の中学生』より)という興味深い統計を引用しています。下記に示します。
日本●、アメリカ〇、数字はパーセント
友だちをいじめる ●64 〇94
タバコを吸う ●80 〇93
無断外泊をする ●74 〇90
シンナーを吸う ●84 〇95
万引きをする ●84 〇97
先生に暴力をふるう ●80 〇95
公共のものを壊す ●80 〇95
夜遊び、不帰宅 ●76 〇86
授業をさぼる ●77 〇91
遅刻をする ●52 〇87
先生に反抗する ●60 〇83
上記の統計で驚くのは、いじめや喫煙、ドラッグ使用などについて驚くほどに日本の中学生が絶対やってはいけないと思っていないところです。まさかとは思いますが、テストの点数さえ良ければ、遅刻をしてもいいとか、先生に反抗しても構わないなどと生徒が思っているとすれば、それは教育以前の問題です。もし、この仮説が成り立つのであれば、教育が基本的に考え直されるべきだとも思います。
この統計の背景には、成熟した日本がかかえる問題があるように思うのです。
戦後の貧しい日本においては、道徳や倫理などをことさら取り上げて考える余裕を社会が持っていませんでした。とにかく、貧しさから抜け出したい、生活水準を少しでも上げたいということで、みな必死でした。
気が付いてみると、日本はアジアのみならず世界でもアメリカに次ぐ経済力を身に着けていた。その好景気、長続きはしなかったものの日本は戦後の貧しさのかけらもない国になりました。
どん底から脱出する過程で、日本は大切な教育の基本をもしかするとどこかに置き忘れて、そのまま放置してしまったようにも思います。その結果が、日米の中学生比較の統計の数字で示されてはいないでしょうか。
つづく