現役留学生の悩み
「留学しているの・・・。じゃあ英語ペラペラでしょ」
イギリスのボーディングスクールに2年ほど留学しているある生徒と
悩みを共有する機会がありました。
成人になってからの留学と違い、10代での留学は、
本人が好むと好まざるとにかかわらず、その情報がいつの間にか
自分の周辺に行きわたり、漠然とした「期待」に応えたり、
反応したりしなければならないことがあるようです。
日本では英語が話せることに対して、
多くの人が無条件の憧れを抱いています。
「英語が話せたら」という仮定のもとで、いろいろな未来が空想されます。
学生であれば、就職に有利、社会人であれば、世界の広がり、
海外への飛躍、異文化人との付き合い、優越感など、
思わずにんまりとしてしまうような経験は、誰しも無縁ではないと思います。
「英語ペラペラ」と言われる側としては、楽天的な未来への希望の前に、
見知らぬ土地での苦労や孤独、寂寥感、混沌のなかでの自己喪失など、
説明すら整理できない状況から、自分を鼓舞して、
やりくりしているのですから、「何か英語で話してよ」などと言われると、
怒りという感情を通り越して、全身の脱力感を覚えるのかしれません。
「英語で何を話せというのだろう」と英語ペラペラと言われた人たちは
内心、思うのですが、それを具体的に言うことは、日本的な受け答えで
ないことは、留学生たちにもわかります。
故に、彼らは「そうでもないよ」などと返答するしかないのだと思います
10代の留学生たちの本音は、「英語がペラペラだから何だ」でしょうが、
英会話についての議論は、あまりにも空しいので、
笑顔をなるべく保ちながら、英語で何かはなすことをかわします。
我が子が留学している多くのお母さん、お父さんが、
「うちの子が英語を話すのを聞いたことがない」と言います。
確かに、自らの息子が留学した時も、私が彼に英語で質問しなければ、
家内は息子の英会話など、聞く機会はなかったでしょう。
余談ですが、私と息子の英会話を聞いた家内は、
息子の英語のほうが、ネイティブに近いと言っていました。
果たして、家内は何を根拠にそう思ったのか、
それは恐らく永遠の謎でしょう。
それが母親の本質としか私には言うことができません。
留学を行っている皆さん、周囲の期待にすべて答える必要はないと
思いますが、お母さんのリクエストには、満面の笑みを浮かべて、
答えてあげてください。
それが、親孝行の最も簡潔で効果的な表現になります。