ボーディングスクールの全人格教育
全人格教育を理想として、学校運営を行っているのがボーディングスクールです。小学校5-6年生でボーディングスクールを見学に行き、中学校1年生で留学する生徒たちが、その後の中等教育時代を日本外で過ごすことができるのは、彼らにとって、ボーディングスクールの教育が魅力的だからと確信します。
さもなければ、居心地が極めて良く、日常に何の不自由もない我が家に戻ってくるはずです。
留学生たちを引き付けるボーディングスクールの教育、その根本が全人格教育ですが、この教育をひとことで言えば、教える側、学ぶ側相互の人格の尊重にあると思います。人が人を大切にするという当たり前なことが実はとても難しい命題のように思われる時もたくさんあります。
この根本を飛ばして、対策に終始した方が、結果を出すのに手っ取り早く、時間も手間も短縮できます。そして何より教えることのマニュアル化により大量の人をさばくことも可能になるでしょう。
その代わりに、教える側と学ぶ側のコミュニケーションが薄れて、お互いの関係性も希薄になりがちです。それでも結果がすべてなどと考えるのであれば、それは教育という範疇で考えられなくてもいいのではないでしょうか。
ボーディングスクールを支えているのは、生徒と先生の関係性における愛の精神ではないかと思います。それ故に、学ぶことに興味も持てるし、意欲も湧いてくるのではないでしょうか。一方通行に教えるだけであるならば、クラスである必要は究極的にあるでしょうか。試験にでるための対策であるだけであれば、学校というところに日々通わなくてもテレビ画面で最も優れた人の授業を見ながら学ぶことが十分に可能ではないでしょうか。
アメリカボーディングスクールの創立年の平均は100年を超えます。TABS加盟の学校が200校ほど、Boarding School Reviewの学校リストが300校あまりですが、それらの学校はその多くが生き残りをかけて生徒募集活動を一所懸命に行っています。
自国の経済の低迷、世界の中でのアメリカの影響力の翳りなどから、国内だけではこれからの学校運営は危機に晒されると考え、世界の英語圏の中等教育機関のなかでも先駆けて留学生のためのインフラを整備したのもアメリカのボーディングスクールです。
少人数制、体育、芸術、音楽科目の充実、寮施設の改善など、ボーディングスクールは独自の進化を続けていますが、その根本にある全人格教育はいささかもぶれてはいないと思います。