留学生活の孤独
帰国して二日目、アメリカの東海岸は巨大な冷蔵庫のようでしたが、
寒さのピークはとうに過ぎた日本の関東地方、降る雨も優しく感じられます。
春休みに帰国した留学生たちは、冷蔵庫へとみな帰って行きました。
留学生たちが学ぶ環境は、日本に比べるとかなり厳しいものです。
第一に、気候です。
11月の終わりには、雪が降り始め、その雪が今になっても残る年もあります。
9月上旬から6月上旬の一学年間のうち、
半分くらいは雪と付き合うことになります。
寒さ厳しい生活に孤独を感じるのは、ごく自然の感情ではないでしょうか。
第二に言葉のハンディです。
特に留学初年度は、ゼロからの出発といってもいい留学生がたくさんいます。
生活英語を覚えるまでの時間は、一年以内とそれほど長くはありませんと、
いつも言っていますが、当の本人にしてみれば、
言葉の不自由な日々に孤独は、寄り添います。
第三に文化の違いです。
ルームメイト、クラスメート、そして先生との付き合いに、
戸惑いや不安、そしてしばしば怒りを感じることも日常です。
貸したものが帰ってこない、約束が実行されなくても平気でいられる、
気に入らないと感情をむき出しにする、空気が読めなくわがまま、
やれやれ、異文化を受け入れるとは、骨の折れるものです。
いっそ孤独に身を置いたほうが気楽かもしれません。
孤独のマネジメントは、人が生きていくうえで
優先順位のかなり高いことのように思えます。
そして、留学生たちは、それを好むと好まざるとにかかわらず、
留学を通じて、体得しているのではないかと思います。
留学先を決める時、留学する本人の気持ちは尊重されます。
学校を訪問して、どの学校で学ぶかを決めるのに、
親が一方的に決断を下すことはありません。
決断の現場に立ち会うとき、子どもたちがあえて、日本人のいない学校を
選択したり、ESLクラスのない学校を選んだりするのを見るとき、
彼らはすでに、孤独マネジメントをそれまでの人生のどこかで
学んできたのではないかと思うことがあります。
孤独でない時間も学校訪問においては共有させていただき、
子どもたちの旺盛な食欲や家族との楽しい会話を見ていると、
年齢とは無関係ともいえる彼らのたくましさや
心に秘めた勇気に私は感動します。
正確には、感動というよりも、考えさせられそして驚くのです。
孤独と仲良くする、孤独をあるものとして、生活の中に取り入れる、
留学生たちの学習は、テストの結果だけではありません。
人生に対する彼らの取り組みは、
学校カリキュラムには記載されていない必須事項です。
それをなんと見事に留学生たちは、学んでいくことでしょう。