日本の高校入試について
日本で屈指の難関高校を受験した生徒のお母さんからいただいた情報ですが、その高校の受験科目は四科目で社会科がないそうです。合否の発表は、学校で受験番号が張り出されるほかに、受験した本人にもたらされるのは、合格点と最高得点そして本人の点数だそうです。合格、不合格という通知ではないそうです。
進学実績からしても、この学校の入試という生徒選抜方式は多くの後期中等教育機関に影響を与え、またすでに多くの私立の中等教育機関はこの学校と類似した入試方式を取っていることでしょう。
試験の点数で合否を判定するわけですから、受験生の前期中等教育機関での学習実績は問わないことになります。この四科目の試験は二日間にわたって行われるそうです。
この学校の入試のやり方から見えてくるものは、試験に対する絶対的な信奉です。それまでに何をどのように学んできたかということは、すべて試験の結果その点数であらわされることになります。
社会科のテストがないことについては、学校側からの説明は無いようですが、一般的には暗記事項が多いこの科目については、「暗記」がしっかりできているかは問わないという学校の判断によるものと思われます。
ボーディングスクールの社会科の授業のような筆記問題、「もし第二次世界大戦で日本が勝っていたらその後の世界はどうなっていたか」などは点数の付け方の基準が複雑で判定が公平性に欠けるだけでなく、採点に時間のかかるなどの理由で採用されないでしょう。
この学校の入試方式は結局、大学入試の相似形ではないかと思われます。そしてもしこの仮説が成り立つとすれば、日本では、中学、高校という学びの場は、いよいよ試験対策に特化していくに違いありません。
試験対策という目標が明確である以上、試験以外の要素を求める生徒に対しては、学校のサポートは積極的でなくても当然のことと受け止められるでしょう。かくして、10代の若者たちは、試験の結果を求めて自分の生活を組み立てることになると思います。
「点数だけで人は判断できない」と思ってみても、叫んでみても、現実は変わりません。日本の教育システムのなかでは、今更、変えようがないというのも現実のような気がします。
それ故に、中等教育の場を世界にもとめて、高等教育という選択肢をグローバルに拡大するという考え方をする日本のファミリーが増えているということもまた現実であることは間違えありません。