#2 ボーディングスクールのハンズオン教育について
ボーディングスクールで教鞭を取った経験のあるアドミッションスタッフにディスカッション形式のクラスが多くて、覚える学習が不足しないのか聞いてみました。その先生の回答のキーワードは、how to learnとwhat to learnでした。
これは、和訳をすれば、何を学ぶかとどのようにして学ぶかということになります。たとえていえば、釣った魚をあげることと、魚の釣り方を教えることの違いというようなことになります。
その先生は、自身が持っているスマホを指して、「知識はこの中に入っています。暗記することが問題ではなく、正しくここから情報を引き出すための方法を生徒には学んでほしいと思います。」と言いました。
クラスでは、ハンズオンの教育が徹底されているボーディングスクールですが、情報収集のリソースは、コンピュータが不可欠です。先生の板書はほとんどがスマートボード、すなわちパソコンと直結していて、宿題の提出もネット上で行うことが当たり前になってきました。7年生からの学習においては、自分用のパソコンが授業においても不可欠と言えます。
それ故に、情報収集の様相は、インターネットが普及していない時期とは、全く異質なものとなりました。
知っているか、いないかが問題なのではなく、正しく、正確に情報を引き出せるかどうか、すなわちhow to learnが暗記するよりもとても重視され、かつその方法論が学ばれなくてはならなくなっています。
ネット環境が充実しているからこそ、合理的に時間が使え、少人数でのクラス学習重視、ディスカッションや発表が中心となる授業がボーディングスクールでは可能になっています。
テスト対策だけの学習であれば、ネットを使って調査したり、ディスカッションや発表をしたりする必要はありません。与えられたものを、短期集中で暗記して、それをテストのときに正確に出せればそれですべてが完結します。
日本での優秀な成績というのは、そのような暗記中心の作業がまんべんなくどのような科目に対しても、忍耐強く、間違えなく行えるかどうかにかかっているように思います。
なぜそうしなければならないか、それが自分にとってどのように役に立つのか、自分が本当にやりたいことは何かなどと、考える必要はありません。受験というシステムの中では、学ぶことに対する根本的な疑問は持てば持つほど、受験に対して害を及ぼす結果になってしまうのかもしれません。
すでに受験という枠組みが完成している以上、それを壊さない限り、受験勉強の内容と範囲が劇的に変化することはないと思います。
つづく