ボーディングスクール - 家族的団結
ボーディングスクールのコミュニティー(社会)を家族として捉えることの最大のメリットは生徒たちをやる気にさせることではないかと思います。家族ですから、当然いじめもありません。私の知る限り「いじめ」が原因で帰国した留学生は34年間で一人もいません。
ボーディングスクールの規則には、いじめに関してかなりこまかなことまで規定されています。それは、「いじめ」というよりもハラスメントとしてやってはいけないことや、やられた場合の対処と学校の姿勢が示されています。そもそも生徒総数が300名前後なのがボーディングスクールの現実ですから、いじめが見逃されたり、ぞんざいに扱われたりはしません。そのような環境に家族的団結は生じ得ません。
家族的団結は学業によってのみ評価されるものではありません。それぞれの生徒の特性が生かされるように学校は配慮します。それがスポーツの奨励であり、生徒によるミュージカルや演劇などの上演、そして老人ホームへの訪問や、ホームレスの人たちへの食事提供の手伝いなどの社会活動への参加です。
「勉強さえできればいい」という考え方はボーディングスクールにはありません。むしろ、その前に人としての基本である誠実さ、正直さ、協調性、チームワークなどが学校生活のなかで教えられるのです。そのために、寮生の夕食を1週間に一度、フォーマルにしたり、外部から著名人を迎えてのスピーチなどが行われたりもします。
先生と生徒の一体感もボーディングスクールを大きな家族と捉えるためには欠かせないことです。彼らは、クラスで団結するだけではなく、むしろ授業中よりも食事、土日休日などで行動を共にすることで、団結するために欠かせない連帯感が高まるのだと思います。先生は生徒に知識を提供することが、第一義の仕事ですが、24時間一緒に暮らすわけですから、必然的に人生に対する考え方、価値観なども生徒には伝わっていくことでしょう。
すべてがプラスにとらえられるわけではありませんが、生徒たちが大人に成る過程で自らの判断で良し悪しを決めることも重要です。
家族のあり方が社会の変化につれて、変化するなかで、ボーディングスクールの大きな家族という概念は、100年前も今もそれほどには、変わっていないのではないかと思うことがあります。それは技術や知識ではなく、人の愛やこころに関することが尊重されているからにほかなりません。