ニュージーランドの補習校
英語圏の国には日本のような予備校、塾、家庭教師といった学習補助機関はありません。一方で日本以外にもアジアの国々では予備校や塾は教育文化として根付いているようです。
今回、ニュージーランドの学校を訪問したオークランドのニューマーケットという地域には素晴らしい施設を持った私立中学、高校のほか、大学、博物館、公園などがあり、目抜き通りには大小の中国レストラン、日本レストランが散見されるほか、タイ、ベトナム料理店、映画館、ブティック、ファーストフード店もあります。中心地には、露天で食事が楽しめる洒落たレストランもいくつもあり、スイスのルガノやジュネーブのようです。
中心地を外れるとゆったりとしたスペースに車ディーラーがいくつかあります。フェラーリ、メルセデスベンツなどの専門代理店もあり、クラシックカーや最新のモデルがショーウィンドーに並んでいます。
ニュージーランドに初めてきた90年代の最初のころには、日本車の中古ばかりが走っていた印象でしたが、この四半世紀の間にこの国も裕福で便利になってきていると思います。
この文化的な街をいつものように学校訪問が終わりジョギングしていると、目立たない路地の一角にMath、Science、Writing、Reading、NCEAを補習するという控えめな立看板がありました。5階建てのビルの前にその看板はありました。英語圏の国々でこのような看板を見かけたのは初めてでした。NCEAの指導ということは、日本で言えば予備校機能を備えているということになります。
ニュージーランドでも学歴をより重視する傾向が出てきたのかもしれません。
NCEAの結果によって学校ランクが明確に決められ、そのデータが公開されることで、進学する本人も親も学力に対する関心がより具体的になっていくことでしょう。
しかしながら、トップ校では、生徒たちがNCEAで高得点をあげるため、あるいはより良い条件でNCEAを達成するために躍起になって勉強をしている印象はありませんでした。それよりも、生徒たちが熱中できる学習機会以外の場や空間を充実させることで彼らのやる気を引き出しているように感じました。
果たして、ニュージーランドでは、NCEAのための予備校、補習校、そして個別指導がこれから、教育ビジネスとして成長していくのでしょうか。もし、そうだとすれば、英語圏の国でアジア的な教育文化を持つというユニークな国にニュージーランドがなっていくことになります。
農業とホスピタリティーが盛んで、日本語学習もかなりの高校で取り入れられているこの国の発展を支える若者たちにとって、NCEAの結果がもたらす教育効果が知識偏重にならないことを願っています。