日曜コラム 若者の憧れ―平成最後の年末
平成時代を象徴している世相は、若者の意識の変化ではないかと思います。
昭和という日本にとって歴史上稀に見る激動の時代から、
良くも悪しくも安定期に入った平成という時代は、
若者のニーズが劇的に変わりました。
グローバル時代なのだからそれもいわば自然の流れなのかもしれません。
昭和時代の若者は、海外に憧れ、車に憧れ、未知の世界への冒険に
怖いもの見たさの意識が豊富だったように思います。
「何でも見てやろう」、「バックパックで世界旅行」といった
日本を飛び出すことに淡い憧れを抱いていた若者が沢山いました。
私もそのなかの一人で、学生時代のふとした思い付きで、
翌日から朝4時に起きて新聞配達を半年間続けて、何でも見てやろう資金を
自己調達して半年ほどアメリカを旅しました。
新聞屋さんの店長から、アルバイトのきっかけを聞かれたのですが、
「車?」と言われたのを、あれから40年ほど経った今でも鮮明に覚えています。
憧れの車を買いたくて、身近な資金稼ぎができる新聞配達は、
若者に調法されたのではないかと思います。
今の若者の憧れはどこにあるのかと私は思います。
乗りたい車も、未知の世界をみる貧乏旅行も、平成の末年には若者の意識から
すっかり消滅してしまったように思います。
その理由は、物理的豊かさが日本にもたらされたからでしょうか。
それとも、グローバル時代に呼応して、若者の意識が変化したのでしょうか。
いずれにしても、「憧れ」を持つことは、老若男女問わず必要に思います。
達成したい何かが日常に存在しないことは、
とても悲しいことではないでしょうか。
と言うと、「何をおっしゃいますやら。毎日が目まぐるしくて、
『憧れ』なんて思う贅沢な時間がございません」と
オフィスを尋ねてくる生徒のお母さんに言われそうです。
もしかして、私が生涯現役コンサルタントでありたいと願うのは、
自身の憧れのイメージを現代の若者とできれば共有し、
海を越えた向こうの世界で彼らが憧れの無意識的再生するのを
見守っていたいからなのかもしれません。