#2 教育の選択肢 小学校のボーディングスクール
スイスのイタリア語圏、ルガノにあるTASIS(The American School in Switzerland)の現理事長は、この学校の創立者、フレミングさんのお嬢さんです。そのお嬢さんは5歳の時からボーディングスクールの生徒になったそうです。お母さんのフレミングさんが学校創立に奔走している60年代からボーディングスクールで教育を受け、お母さんの後を継いで、TASISの運営のトップに立って活躍しています。この学校を訪問する度に、新たな校舎や寮が作られつつあるのを見るにつけ、成長している元気な学校であり、これからも伸びていく学校だと確信します。
3年前にTASISを訪問した際、15歳の生徒の親がわが子をボーディングスクールに出すことの一抹の寂しさと不安を彼女に語ったところ、「心配いりません。私は5歳からずっとボーディングスクール生活をしていましたから」と言ったことが印象に残ります。
スイスには、ラガレン、プレフルーリといった小学校に特化したインターナショナルスクールがあります。その他にもスイスラーニングというインターナショナルスクールの団体に属する11校の初等、中等教育機関においてもほとんど学校が小学校からの留学生を受け入れています。
多くの国々によって構成されるヨーロッパでは、教育は必ずしも自国のなかで完成するものではなく、その選択肢が小学校の時代から他国でのボーディングスクールでも可能ということが、教育文化として定着しているのかもしれません。
スイスのボーディングスクールと好対照を示すのがアメリカのボーディングスクールです。トップにランキングされるテンスクールズはすべて9年生から12年生のハイスクールの学年のみで、小学校、あるいは中学校の付属は一校もありません。ランク4の学校群30校余りにおいても、グロトンスクールが8年生よりあるほかは、ほとんど9年生からのハイスクールからのボーディングスクールになっています。
アメリカは面積が広大でカナダとメキシコに国境を接するといっても日本と同様、「島国」です。そこでは、小学校からの寮生活という教育の選択肢は発達する必要が無かったのかも知れません。
つづく