よくある相談① 長期留学中の子供と家族の悩み/ The Willpower Instinctをヒントに。
GWも終盤に差し掛かり非日常の中の「日常」が戻ってきます。私にとってコロナ前までに存在していた1日2時間の読書時間=通勤時間が半分ほどに目減りしたため、意識的に在宅勤務をしている時にも本を読むようにしていますが、このGWも同様に何冊か英文の本を読みました。
大学院時代の膨大な英文の本を読む訓練を通して英文の本を読むスピードも劇的に上がりましたが、それでもやはり日頃からトレーニングを続けていないと読む力についてもすぐに衰えてしまうように感じています。英語を身につける事はスポーツにおける筋力トレーニングと同じで継続する事で少しづつ変化が見えてきますし、同時に怠けてしまえば衰えていくものである事もやはりスポーツと似ている点と言えるかも知れません。
幸い、私はスポーツにしても読書にしても好きな事なので苦労なく続けていくことができます。
「好きな事を仕事に」Youtubeのプロモーションで確か使われていたこのキャッチフレーズはとても魅力的に聞こえますね。しかしながら、現在学びのプロセスの途中でこれから自分の好きな事を見出していく過程の留学をしている生徒たちにとっては本当に好きな事だけをやっていく事は出来ません。
好きな事を見つけるための過程の中で、進んでやりたいと思える事もあれば、出来れば避けて通りたい事もあるでしょう。先生の相性や学習の難易度、クラスメイトとの関係性、そしてそもそもその科目に対する興味が薄ければ、なかなか勉強に身がはいならない事もあると思います。
前置きが長くなりましたが。今回から数回に分けて「よくある質問」ついて何回かに分けてお話をしていこうと思っています。初回は「うちの子が留学先で全く勉強しない」という質問にアプローチをしていきます。
ボーディンスクールの留学は長期間にもわたる留学になりますので、学習に対するモチベーションについても浮き沈みが必ずあります。休みの多いボーディングスクールのスケジュールにあって、勉強に対するモチベーションを一定に保つ方が難しいと言えると思います。加えて日々の生活の中ではビデオゲームや友人からの遊び誘いなど、いろいろな誘惑とも闘わなければなりません。
ご家族にとっても、たまに電話で話をする子供が勉強に対するモチベーションについての悩みを口にした時にどんなアドバイスをすれば良いのか分からない、もしくはアドバイスをするけれど、それが果たして本人に響いているのか分からないという悩み相談を受ける事もしばしばあります。
このヒントは実はいろいろなアプローチで解決をする事ができると考えていますが、その一つに、今私が読んでいるThe Willpower Instinct / Kelly McGonigal, Ph.D. スタンフォード大学の教授の著書にもそのヒントが隠されていました。彼女はこの本の中で短期的な誘惑に打ち勝つための手段として長期的なゴールを設定する事を推奨しています。これは私が留学生活に悩んでいる生徒やそのご家族に対して日頃のアドバイスに共通する部分ですが、長期の留学をしているとその根本の目的を忘れてしまう生徒やご家族は少なくありません。
そんな時に思い出して欲しいのが
「そもそもこの留学の目的はなんだったのか?」
という事です。英語力を伸ばすために現地の友人と遊ぶ事はとても素晴らしい事ですし、そうする事で英語でのコミュニケーション能力は上がりますから、私も留学初期の子供達にはその楽しさを体感する事を推奨しています。しかしながらボーディングスクールへ留学した目的は英語のコミュニケーション能力を身につける以外にも何かあったはずです。ボーディングスクールの良質な教育を受ける事でその先になる何を目指しているのか?それを日々の生活の中で繰り返し思い返す事はとても重要です。
そして、その考える過程をしっかりと踏んで留学をした子供たちは日々の誘惑に飲み込まれる事は一時的にあっても、すぐに軌道修正して、長期的な目標に向かって自分の時間を有効に使う事を覚えてきます。なぜならばその長期的な目標が実は短期的な誘惑、例えば甘いお菓子だったり、宿題を先延ばしにしてしまう事だったり、オンラインゲームだったり、そして時に校則に触れるような誘惑もあるかも知れません。特に留学を検討中のご家族からは、親元から離れる子供たちに対する負の側面について心配される方が非常に多いように感じています。長期的、明確な目標(本人が設定したもの)は、それらに打ち勝つための武器になるのです。
実際のケースを紹介しましょう。私が去年までサポートをしていた女の子は中学卒業のタイミングで私のところに留学の相談に来てくれましたが、彼女はその段階から心理学を学びたいという目標をとても明確にしていました。その彼女は海外留学中にプライベートでの困難、ホームステイ先での関係性に対する悩みなどもあり、一時期帰国の危機にさらされる事もありました。それでも彼女の目標は一切ぶれる事なく、その熱意は私に対しても勿論ですが、ご家族や学校、学校で出会った友人などの心を動かされ、最終的にはいろいろな人のサポートを受けながらニュージーランドにある世界でも有数の大学に進学が決まりました。
今、WILLPOWERの重要性=長期的な目標設定の重要性については、私が子供達に提供するトレーニングでもこの部分にフォーカスしたトピックを導入していますが、留学中の生活をより良いするためには、実は留学前の段階での心の準備=目標設定が重要である事をお伝えしたいと思います。
そのロジカルな部分を理解する上でThe Willpower Instinctという本のアプローチはとても参考になると思っていますので、留学を検討されている本人、ご家族にはぜひ一読いただく事をお勧めします。