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海外の学校ではChat GPTをどう捉えている? Vol.2 Wesley Collegeのニュースレターより

前回の続きです。

Chat GPTが各方面で話題になっていますね。このような革新的な技術が生まれる際には、必ずと言ってよいほどプラスの面と同じくらいマイナス面についても議論のが巻き起こります。比較的アカデミックなフィールドにおいては拒否反応よりもむしろどのように活用していくべきか?という非常に前向きな議論となっているように感じられます。

私が定期的に聞いているWall Street JournalのポッドキャストでもChat GPTはホットな話題ですが、この現象はいつの時代にも起こっていることとして、その昔、木版印刷から機械式印刷機に取って代わられた際にも同じように議論が巻き起こったという話をしていました。生活に直接的に関わるドラスチックな変化が起こるときの前触れはいつもそうなのかもしれません。直近で言えばインターネットやスマートフォンの普及も同じです。アカデミックにおける拒否反応はありましたが、今では無視できない存在となっています。Chat GPTについて一つ確実に言えるのは、それ以前の生活に戻ることはもう無いということでしょう。

さて、前回のブログで紹介をしたオーストラリア・メルボルンのWesley Collegeのニュースレターですが、このレターの中で、各科目の先生方が実際にChat GPTを利用した際の感想を述べています。それを読む限りおおよそポジティブな感想が並んでいます。生徒にとっては、知識の深掘りという意味において効率的に学習できるツールになりうること、一方で教師陣側においては日々の試験や授業のコンテンツ作成において大いに役立つ可能性を秘めているという感想が多くを占めていました。まるで機械とコミュニケーションをしているようにChatをすることで、時にリサーチのパートナーとなり、時には優れた翻訳者となり、そして時には優秀な編集者として、ジャンルを問わずに多くの人たちの学習をサポートする可能性を秘めていると彼らは表現しています。

多くの親御さんや学校の興味はこれが本当に子供たちの教育の役に立つのか?という部分にあるのだと思います。例えばインターネットやスマートフォンはどこでも瞬時に集合知にアクセスできるようになることで、単純作業としての「暗記」の価値を著しく低下させました。物事を単純に暗記する作業は既に時代遅れの教育と言えるかもしれません。(暗記作業自体を否定するものではなく、単なる暗記を最終目的とする暗記後の知識の発展性のない学習は今後淘汰されるという意味です。)

それでは、Chat GPTは何をもたらすのか?私の個人的な意見として、例えば「上手いエッセイの書き方」などの見栄えを良くするためのスキルはChat GPTがカバーすることで評価基準から段々と外れてくるのではないかと予測をしています。(Chat GPTの利用を厳しく禁止する環境においては別ですが。)。情報、内容の精度については使い手の判断に委ねられますが、エッセイのような一般的なスキルはすでにChat GPTが最も簡単に生成してしまいます。

それではこれからの学習の評価基準はどこに向かうのか?このとても興味深い部分についてもWesley Collegeのニュースレターで先生方は触れています。

ある先生はこう言っています。(以下引用 Wesley Collegeのニュースレターより)

What skills and capabilities make us human? Which ones can we use to add value to the world that a machine can’t?

”どのスキルが人間を人間たらしめるのか?何を持って我々は機械には生み出せない価値を生み出すことができるのか?”

When AI can essentially write an essay at the touch of a button, we need students to master different skills, such as understanding context, bias and creativity. These will be far more important than simply writing an essay

(引用/参照 Wesley College:https://www.wesleycollege.edu.au/news-events-and-publications/latest-news/2023/04/chat-gpt)

”これからはエッセイはボタンをクリックすれば勝手に生成される世の中になる。そこで生徒たちに求められるスキルとは色々な偏見の溢れる情報の中で物事の本質や、そこからさらに自らの想像力を付加して新しい価値を生み出す能力こそが評価される。” と言っています。

日本の教育においてはまだまだ一般的な、暗記の方法、エッセイの書き方、ハイスコアの取り方、など「型」を勉強する時代はすでに終わりを迎えているのかもしれません。これからは誰もがアクセスできるネット上の集合知をChat GPTのようなAIで整理、個人個人の頭の中のフィルター(ジェネレーター?)を通して、いかに独自性のある考え方をアウトプットできるか?これが新しい勉強であり、評価基準にになるのかもしれないと強く感じるに至りました。

Chat GPTを禁止することは簡単です、自らの生活から遠ざけることもできるでしょう。でもそれは、見たくないものに蓋をするのと同じです。なぜならば、ネットの無い世界、スマートフォンのない世界が無いのと同じで、これからはChat GPTのない世界に戻ることはほぼあり得ないからです。そうであれば、それを持って新たな教育、学習方法を模索するしかありません。その意味においても、オーストラリアのWesley Collegeの早い段階でのこの取り組みはとても評価されるべきものだと感じますし、留学生を送る学校の選択肢としての価値のある学校であると思うのです。

 

 

 

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